商談や業務報告にて丁寧で落ち着いた印象を添える「かねてより」の伝え方

日々の営業活動の中で、以前からの取り組みを報告する機会は数多く存在します。そのような場面で用いる言葉の選択は、提案内容の説得力を高めるための重要な鍵となります。本記事では、コミュニケーションをさらに円滑にする表現の実践的な使い方や注意点を解説します。表現の幅を広げる別の言い回しについてなども紹介します。
言葉の意味
この言葉は、以前からその状態が続いていることや、前もって準備を進めてきたことを示します。「以前から」や「前々から」という意味合いを持っており、あらかじめ準備をしてきたことや、過去から現在まで継続している取り組みの起点を指し示す役割を持っています。
少し改まった響きを持つため、進捗報告や改まった場での会話や報告書などの文書や目上の方との会話において、物事を以前から継続して進めてきたという経過を、丁寧に説明する際に適しています。
使用時に気をつけたいポイント
この表現を活用する際には、相手への伝わり方や状況に応じて、いくつか留意しておきたい点があります。特に書面でのやり取りや、言葉を重ねる際の影響においては、以下のポイントを意識することが大切です。
ポイント 1. 読み手の誤解を防ぐ表記を心がける
この表現を漢字で書き表す際、「兼ねてより」という表記を用いると、受け手によっては「2つの役割をあわせ持つ(兼任など)」という意味に受け取られる可能性が生じます。読み手の誤解を防ぎ、意図を正確に伝えるためには、基本的にはひらがなで「かねてより」と表記するか、「予てより」という表記を選ぶ配慮が必要となります。
ポイント2. 言葉の重複になっていないか気をつける
「かねて」と「より」は、構成するそれぞれの言葉に「以前から」という同じニュアンスが含まれているため、言葉の重ね使い(二重表現)にあたると捉える方も一部に存在します。歴史的に長く使われてきた言葉ではありますが、厳密な表現が求められる公式な報告書やメールなどの文書では、使用を控えて「以前より」や「従来」といった言葉へ言い換えることで、より確実な意思疎通につながります。
ポイント3. 相手への敬意が伝わる動詞を選ぶ
この言葉は過去からの経緯を表すため、後ろに続く動詞もその事実に合わせた形にする必要があります。例えば「かねてより進めていたプロジェクト」とそのまま伝えるのではなく、相手への敬意を示す言葉遣いと適切に組み合わせて「かねてより進めてまいりましたプロジェクト」と言い換えることで、報告や提案全体の品格が保たれます。
シーン別の具体的な活用方法
取引先や目上の方とのコミュニケーションにおいて、過去からの経緯や準備の状況を伝える場面は多く存在します。以前から取り組んできたことや、継続している関係性を表現する際にこの言葉を添えると、丁寧で落ち着いた印象を添えることができます。ここでは、日頃の業務報告や提案の場で応用できる具体的な活用方法について解説します。
1. 進捗状況や成果を報告する場合
以前から継続して進めてきた業務の状況や、準備を重ねてきた成果を報告する際に役立ちます。
あらかじめ計画的に物事を進めてきたという経過を、相手に分かりやすく伝えることができます。
- かねてより尽力してまいりました新規事業につきまして、おかげさまで目標通りの進捗を見せております。
- かねてより進めておりました業務効率化の計画が、今月より本格的に始動する運びとなりました。
2. 相手への感謝や敬意を伝える場合
日頃からお世話になっている取引先や、以前から懇意にしている目上の方に対して感謝や敬意を伝える場面で使います。
これまでの関係性に対する深い感謝の意を、礼儀正しく伝える場面で非常に重宝します。
- かねてより多大なるご厚情を賜り、心より深く感謝申し上げます。
- かねてより格別のご高配をいただいております貴社に、第一にご案内したくご連絡いたしました。
3. 要望や過去の約束事について確認・依頼する場合
以前から依頼していた件や、相手から受けていた要望に改めて言及する際に活用できます。
唐突な印象を和らげつつ、これまでの経緯を含めて丁寧に確認や提案を行うことができます。
- かねてよりお含みおきいただいておりました契約の更新について、詳細をご相談したく存じます。
- かねてより皆様から多くのご要望を頂戴しておりました仕様の変更を、次回の改定にて反映いたします。
状況に応じて使い分けたい 言い換え表現
場面や相手との関係性に応じて言葉を使い分けることで、伝えたいニュアンスをより正確に届けることができます。
状況に合わせて適した言葉を選ぶための言い換え表現を解説します。
● 以前から(以前より)
日常的な会話からかしこまった書面まで幅広く使える、なじみ深い表現です。過去からの継続性を強調できる一方で、尋ねる文脈によってはやや直接的な響きになることもあるため、語尾を工夫して丁寧に伝える配慮が好まれます。
▢ 以前よりお聞きしておりました新システムへの移行について、進捗をご教示いただけますでしょうか。
▢ 以前より多大なるお力添えをいただいております〇〇様に、今回のプロジェクトの統括をお願いしたく存じます。
● あらかじめ
物事が起こるのを予測し、将来のために先立って準備や手配を行う際に用いる言葉です。 過去からの継続ではなく、先を見据えた行動や事前の了解を求める場面に適しています。
▢ スケジュールに一部変更が生じる可能性がございますので、あらかじめご容赦いただきますようお願い申し上げます。
▢ 共有事項の確認にお時間を頂戴いたしますことを、あらかじめご了承いただけますようお願い申し上げます。
● 従来
「これまで」という意味を持ち、過去から現在、そして未来へと続く一連の物事や状態を指す言葉です。 これまでの実績を踏まえつつ、新しい提案や改善策を提示する比較の場面でよく選ばれます。
▢ 従来の運用方法に改良を加えることで、業務効率の大幅な向上が見込める体制を整えました。
▢ 従来の取り組み方針を見直し、今期からは新たなシステムを導入して進める運びとなりました。
● 常々
「いつも」「普段から」という意味を持ち、特定の時点からではなく、日頃から変わらずその状態である様子を表します。 日頃から深く意識していることや、日常的な教えを振り返る場面にふさわしい言葉です。
▢ 〇〇様が常々おっしゃっている経営方針を参考に、今回の事業計画を策定いたしました。
▢ 業務の品質維持につきましては、上司からも常々指導を受けております。
過去からの経緯や取り組みを丁寧に伝える表現は、周囲との信頼関係を築く上で大切な役割を果たします。表記の選び方や言葉の重なりに少し意識を向けることで、より配慮の行き届いた報告や提案が可能になります。状況や文脈に合わせて、言葉の細かなニュアンスや別の言い回しを選択していくことで、日頃のやり取りがさらに円滑になります。今回ご紹介した内容が、大切な商談や日々の業務報告において、表現の幅を広げる一つの参考になれば嬉しく思います。
