「善処します」の間違いやすいポイント、使い方や言い換え表現を解説

「善処します」 は、ビジネスシーンで依頼に対して「状況に応じて適切に処置する」と返答する際に使われます。しかし、確実に返事が必要な場面では使わないなど、その使用には注意が必要です。使い方を誤ると失礼にあたることもあり、正確な意味と適切な使用シーンを理解することが、ビジネスでの印象を左右する重要なポイントとなります。この記事では「善処します」の意味や間違いやすいポイント、使い方や言い換え表現を解説いたします。
「善処します」の意味とは?
「善処します(ぜんしょします)」 は、「状況に応じて適切に処置する」という意味を持つ言葉です。「行いや性質などが好ましい / 物事にうまく対処する」という意味の「善」と、「とりはからう / 物事をしかるべく取りさばく」という意味の「処」が組み合わさっています。
ビジネスシーンでは、相手からの依頼や問題提起に対し「改善を図れるように努める / 適切に対応する」という意思を示す際に使われます。ただし、この言葉は「できるかぎり対応します」「前向きに検討します」といった曖昧なニュアンスを含むため、注意が必要です。「必ずやる」という意味ではないことを理解しておくことが重要です。明確な返答が求められる場面では、より具体的な言い換え表現を用いる方が適切でしょう。
「善処します」の使い方・例文
「善処します」は、ビジネスシーンで非常に役立つ表現です。しかし、その意味合いを理解せずに使うと誤解を招く可能性もあります。 ここでは「善処します」がどのような場面で使われ、どのようなニュアンスを持つのかを解説します。
● 相手から依頼や要望を受けたとき
上司や取引先から何か新しい仕事の依頼、改善要望、あるいは相談を受けた際の返答として、「善処します」を使うことができます。この表現には「不安もあるけれど、前向きに努力します」という意欲を示すニュアンスが含まれています。「善処します」は「努力する」という意思を示すものであり、必ずしも結果を約束するものではありません。また、その場で明確な回答ができない場合に、一時的に回答を保留する際にも使えます。ただし、この表現は「その場しのぎ」と受け取られる可能性もあるため、必ず後日、具体的な対応や回答をすることが重要です。
〈 例文 〉
□ 上司からの指示に対して
上司 : 〇〇プロジェクトの資料作成、今日中に頼めるかな?
あなた: 本日中に善処します。(※ できる限り努力するが、確実ではないことを示唆)
□ 顧客からの改善要望に対して
顧客 : この機能、もっと使いやすく改善できませんか?
あなた: 貴重なご意見ありがとうございます。社内で共有し善処いたします。(※ すぐには回答できないが、検討する姿勢を示す)
□ 取引先からの無理な納期依頼に対して
取引先: この商品、来週中には納品できますでしょうか?
あなた: 現在の状況を確認し、善処いたします。(※ 現状で確約はできないが、調整・努力する意思を示す)
● 自分の発言や行動を改善するとき
顧客や上司から指摘を受け、自身の発言や行動を改善する必要がある場合に「善処します」を使うと、スマートに改善の意思を伝えられます。口先だけの言葉にならないよう、実際に、改善行動を伴うことが何よりも重要です。
〈 例文 〉
□ 上司からのフィードバックに対して
上司 : 君の提案資料、もう少し客観的なデータに基づいていた方が説得力が増すよ。
あなた: ご指摘ありがとうございます。次回から、より客観的なデータに基づいて資料を作成できるよう善処します。(改善努力を約束)
□ 顧客からのクレームに対して(自身のミスが原因の場合)
顧客 : 先日依頼した件、〇〇さんの対応が遅くて困りました。
あなた: ご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。今後、迅速な対応を心がけ、善処いたします。(自身の行動改善を約束)
□ 社内でのコミュニケーション改善に向けて
同僚 : 最近、部署内の情報共有が滞っているように感じるんだけど…。
あなた: 確かにそうですね。私からも積極的に情報共有を行うよう、善処いたします。(自身の行動を改めて改善する意図)
「善処します」を使うときの注意点
ビジネスシーンで「善処します」を使う際は、いくつかの注意点があります。この言葉は便利な反面、使い方を間違えると誤解や不信感につながる可能性があります。
● 1. 曖昧な表現にならないよう注意する
「善処します」は「できる限り対応します」といった意味合いを含んでおり、明確な返答を避ける際に使われることがあります。しかし、相手によっては「適当な返事」「責任逃れ」と受け取られ、ミスコミュニケーションの原因となることがあります。次に何をするのか、いつまでに回答するのか、例えば「〇〇について、社内で実現可能性を検討し、〇〇日までにご連絡いたします」のように具体的な行動を明確に伝えましょう。確実に実行する場合や、相手が明確な返答を求めている場合は、「改善いたします」「対応いたします」「承知いたしました」など、より具体的な言葉を使いうことをおすすめします。
● 2. 二重表現に気をつける
「善処します」は、すでに「状況に応じて適切に処置する」という意味を含んでいます。そのため「適切に善処します」という表現は、「適切に」が重複する二重表現となり、誤りです。シンプルに「善処します」とだけ使いましょう。
● 3. 返答で使う際の注意点
「善処します」は、依頼や要望に対する返事として使われることが多いですが、上記のように曖昧なニュアンスを持つため、使う場面を選びましょう。 確実に対応する場合は 「承知いたしました」「〇〇に対応いたします」など、明確に返答しましょう。重要な依頼や緊急性の高い場面は、相手に不信感を与えかねないため「善処します」は避けるべきです。「明日までにクレームへの回答が欲しい」といった具体的な要望に対して「善処します」と答えると、不誠実な印象を与えてしまう可能性があります。
● 4. 目上の方への使い方
「善処」自体は敬語ではありません。「善処します」と丁寧語の「します」を付けることで、目上の方にも使える敬語表現となります。さらに丁寧にする場合は「善処いたします」が適切です。「善処させていただきます」は、相手の許可を求める必要がないため、「善処します」「善処いたします」で十分です。また、目上の方や取引先に「善処」をお願いする場合は「ご善処のほど、よろしくお願い申し上げます」のように、「ご善処」とするとより丁寧な印象を与えられます。
● 5. 言い切りにならない表現は避ける
「善処させてください」「善処したいと思います」のような、言い切りにならない表現は誤りです。「善処します」「善処いたします」と言い切る形で使いましょう。
「善処します」は、状況によっては非常に便利な言葉ですが、その曖昧さを理解し、相手に誤解を与えないよう慎重に使うことが、円滑なビジネスコミュニケーションには不可欠です。
「善処します」の言い換え表現
「善処します」は「状況に応じて適切に処置する」という意味を持つ一方で、「できる限り対応します」といった曖昧なニュアンスを含むため、場合によっては、ほかの表現に言い換えることで、より明確な意図を伝えることができます。
ここでは「善処します」の言い換え表現を、伝えたいニュアンスごとにご紹介します。
〈 より明確な対応を示す場合 〉
はっきりと「対応します!」と伝えたい場合は、以下の言葉が適しています。
● 対応いたします / 対処いたします
「善処します」よりも具体的に「問題や要望に対して適切な行動をとる」ことを意味します。お客様からの問い合わせに返答する、トラブルを解決するなど、具体的な行動が求められるときに、問題や要望に対して、具体的な行動を取ることを明確に伝えられる言葉です。「対応します」は、相手の状況に合わせて行動するニュアンスが強く、結果の良し悪しにかかわらず使用できます。「対処します」は、ある事柄や状況に合わせて具体的な処置をとる、というニュアンスが強いです。クレームなどに対して具体的な行動を講じる場合に適しています。
〈 例文 〉
□ お客様のご指摘に基づき、速やかに対応いたします。
□ システムエラーを解決するため、技術チームが早急に対処いたします。
● 改善いたします
不備や課題があった際に、その解決に向けて取り組むことを示すときに、それをより良くしていく、改善していくという意図を明確に示します。
〈 例文 〉
□ ご意見を参考に、サービス内容を改善いたします。
□ ご指摘いただいた点につきましては、早急に改善いたします。
● 承知いたしました
相手からの依頼を間違いなく受け入れたことを伝えたいときに、依頼や要望に対して「分かりました」「引き受けました」と明確に了解したことを伝える際に使います。
〈 例文 〉
□ 資料の修正依頼、承知いたしました。本日中に対応します。
□ 資料の修正は、承知いたしました。午後一で対応いたします。
〈 前向きに検討すると伝えたいとき 〉
すぐに「はい、やります!」とは言えないけれど、きちんと検討する姿勢を見せたい場合に使う表現です。
● 検討いたします / 前向きに検討いたします
提案や要望に対して即答できないときに、これから内容を詳しく調べて判断することを伝えられます。「前向きに」をつけることで、要望や提案に対してより積極的に真剣に取り組む姿勢を示すことができます。
〈 例文 〉
□ 〇〇の件につきましては、社内で前向きに検討いたします。
□ 新プロジェクトのご提案、前向きに検討いたします。
□ ご要望いただいた件、社内で検討いたします。
● 努力いたします / 努めます
ある目的を達成するために最善を尽くす、困難な問題に対しても前向きに取り組む姿勢を示す際に使われます。「努めます」は「精を出して仕事をする」という意味で、努力する気持ちを伝えられます。難しいかもしれないけれど、目標達成のために最大限の力を尽くすことを伝えられます。「善処します」と同様に曖昧さを含む場合があるため、具体的に何を努力するのかを添えると良いでしょう。
〈 例文 〉
□ ご期待に沿えるよう、最大限努力いたします。
□ お客さまの満足度向上のために、さらに努力いたします。
□ 同じ失敗を繰り返さないために、再発防止に努めます。
● 最善を尽くします
問題解決や目標達成のために、あらゆる手を尽くす覚悟があることを伝えたいときに、できる限りのことを全て行うという強い意志と誠意を示すことができます。
〈 例文 〉
□ 今回の不手際につきましては、最善を尽くして対処いたします。
□ 今回のトラブル解決のため、最善を尽くします。
〈 相手への依頼や配慮を示すとき 〉
自分から何か行動するのではなく、相手に何かを頼む場合や、相手の気遣いを表現する場合に使う言葉です。
● お取り計らい(いただきますようお願い申し上げます)
「取り計らう」とは「物事がうまく運ぶように考えて処理をする」という意味の言葉です。物事がうまくいくように、適切に処理してください、という依頼の意味合いで、スムーズな対応を相手にお願いするときや、相手の気遣いに対する感謝を伝える場面で使われます。自分の行動を指して使う言葉ではない点に注意が必要です。
〈 例文 〉
□ 本件、お取り計らいいただきますようお願い申し上げます。
□ 先日お伝えした件、お取り計らいいただきますようお願い申し上げます。
□ 日時調整のお取り計らいをいただき、感謝いたします。
「善処します」の間違いやすいポイント、使い方や言い換え表現などを解説しました。「適切に対応する」という意味で便利なビジネス表現ですが、曖昧なニュアンスを含むため、使い方を間違えると、誤解を招く側面も持ち合わせています。使うときのポイントや注意点を理解し、相手や状況に合わせて適切に使うことで、「善処します」が持つ曖昧さを解消し、よりスムーズで信頼性の高いコミュニケーションが可能になります。