「お体ご自愛ください」は敬語?目上の人にも使える?

手紙やメールを送る際に、相手の体や健康を気遣う言葉として使用される「ご自愛ください」の意味や使い方、注意ポイント、言い換え表現や返事の仕方について解説します。

 

1: 「ご自愛ください」の意味

「ご自愛ください」の自愛(じあい)には「自分を愛すること・大切にすること」、「自分の健康に気を付けること」などの意味があります。

「ご自愛ください」は、相手のことを思いやる気持ちを表現する言葉のひとつで「ご自身のお体を大切にしてください」や「健康に気をつけてください」など、相手の健康を気遣う意味が込められています。

 

2: 「ご自愛ください」は目上の人に使ってOK?

「ご自愛ください」は敬語表現になりますので、目上の人に対して使うことができます。

相手の体や健康を気遣い、相手のことを思いやる気持ちを表現する言葉です。取引先や上司、先輩など、目上の人に送信するビジネスメールや会話で使っても失礼にあたりません。目上の人に限らず、職場の同僚や友人家族など、さまざまな関係性の人に対して幅広く使える言葉です。

しかし「ください」と言い切る表現が、上から目線で偉そうな雰囲気に違和感があり、なんとなく使うことに抵抗がある場合は、柔らかい印象になるように「ご自愛ください」の前に「どうぞ / どうか / くれぐれも / 何卒」などの言葉を付けたり、以下のような、より丁寧な表現でお伝えするとよいでしょう。

□ ご自愛くださいませ
□ ご自愛のほど お願い申し上げます
□ どうぞ ご自愛くださいますように
□ ご自愛くださいますよう お祈りしております
□ どうか ご自愛のほど ご祈念申し上げます。
□ くれぐれも ご自愛くださいますよう お願い申し上げます
□ ○○さまにおかれましては ご自愛のほど お祈り申し上げます

 

3: 「ご自愛ください」の注意ポイント

「ご自愛ください」を使うときは、以下のポイントに注意しましょう。

● 3-1: 「お体 ご自愛ください」は二重表現
● 3-2: 体調を崩している方・怪我している人には使わない

 

● 3-1: 「お体 ご自愛ください」は二重表現

「お体 ご自愛ください」という言い回しを見聞きすることがありますが、これは二重表現です。二重表現とは「一番最初に」 / 「まずはじめに」 / 「頭痛が痛い」 / 「返事を返す」など、同じ言葉や意味を含む2語が重複している表現のことです。重言、重複表現、重ね言葉ともいいます。

「ご自愛ください」には「ご自身のお体を大切にしてください」や「健康に気をつけてください」という意味が込められています。そのため「お体 ご自愛ください」や「健康にご自愛ください」のように「お体」や「健康」を組み合わせる表現は、二重表現になります。話し言葉で使ってしまうこともあり、二重表現は絶対に使ってはいけない表現ではありませんが、文字で読むときに気になる方がいらっしゃる可能性があります。

強調したい理由で「お体 ご自愛ください」と使う場合は「お体」を「どうぞ / どうか / くれぐれも / 何卒」などの言葉に言い換えたり、「ご自愛ください」を使わず「お体に気を付けてお過ごしください」や「お体を大切になさってください」などの表現を使うとよいでしょう。

「体」と「身体」の漢字の違い

どちらの漢字も「からだ」と読みます。「体」は肉体のことです。「身体」は心や精神の意味合いも含めた人間のみに使う漢字です。「身体」という漢字は「しんたい」と読みますが「からだ」とも読みます。「身体」は常用漢字ではないため、公用文書では「身体」ではなく「体」と表記しますが、ビジネスシーンなどで相手の健康を気遣う意味で使う場合の漢字は「体」と「身体」のどちらを使っても間違いではありません。「お体を大切になさってください」を「お身体を大切になさってください」は、どちらを使用しても問題ありませんが、「お身体」と表記した場合は、肉体だけでなく心身ともにという意味が込められ、精神状態についても気遣う表現になります。

 

● 3-2: 体調を崩している方・怪我している人には使わない

一般的に「ご自愛ください」は、体調が整っている人に対して「ご自身のお体を大切にしてください」や「健康に気をつけてください」という意味で使われます。そのため、すでに体調を崩してしまっている人や怪我している人に使ってしまうと、失礼な表現と取られてしまう可能性があります。

体調を崩している人や怪我している人には「ご自愛ください」ではなく、相手の体調や症状に合わせて、適した言葉を使い分けましょう。「お大事に」というだけの表現は、省略した表現で失礼になりますので「お大事になさってください 」と伝えるよう注意しましょう。

□ お大事になさってください
□ どうか ご無理はなさらないでください
□ どうぞ 十分に養生なさってください
□ 十分に静養なさってくださいませ
□ ご回復をお祈りしております

 

4: 「ご自愛ください」の言い換え表現は?

「ご自愛ください」の言い換え表現をご紹介します。

□ お体を大事になさってください
□ お体にお気をつけください
□ おいたわりください
□ お体をおいたわりください
□ ご自身をおいたわりください
□ 御身(おんみ)おいたわりください
□ ご健康をお祈り申し上げます
□ ご健康をお祈りします
□ 時節柄おいといくださいませ
□ お体をおいといください
□ くれぐれもお体おいといくださいますようお願い申し上げます
□ ご自愛専一になさってください
□ ご自愛専一にお過ごしください
□ お健やかにお過ごしください
□ 健康には十分ご留意ください
□ 健康に留意してお過ごしください
□ ご健康とご多幸をお祈り申し上げます

● おいとい:
大事にする、いたわるという意味で、相手の健康を祈る結びの挨拶などで用いられる。

● ご自愛専一:
第一に自分自身を大切になさってくださいという意味で、相手の健康を祈る挨拶として用いられる。

 

5: 「ご自愛ください」の返事はどうする?

「ご自愛ください」という内容のメールや手紙を受け取った場合の、返信方法について解説します。返信する際には、体調を気遣ってくださったことへの感謝の気持ちを表現するとともに、相手にも同様の気遣う言葉を返しましょう。

以下に、いくつかの例を紹介します。 相手の体調への配慮を示し、相手との関係性や文脈に応じて選ぶと良いでしょう。

□ 心配をしてくださり、ありがとうございます。季節柄、お互いに気を付けましょう。
□ ご配慮いただきましてありがとうございます。○○様も健康にはくれぐれも留意されますようお祈り申し上げます。

□ お気遣い心より感謝いたします。○○様もどうぞお体にはお気をつけください。
□ お気遣い心より感謝いたします。○○様も健康にはくれぐれもご留意ください。
□ お心遣いに感謝申し上げます。○○様もどうぞお体をおいたわりください。
□ お気遣いの言葉、たいへん嬉しく思っております。お互いに健康を大切にしましょう。
□ お気遣いいただき、ありがとうございます。○○様もお体には十分お気をつけてお過ごしください。
□ お気遣いいただき、恐縮です。寒くなってまいりましたので○○様も体調を崩されませんようお気を付けください。
□ お気遣いをいただき、心より感謝いたします。○○様もお風邪など召されませんよう、お健やかにお過ごしくださいませ。
□ お気遣いいただき、ありがとうございます。ご多用とは思いますが、○○様もお体にはくれぐれもお気を付けくださいませ。

□ 温かいお心遣いに、心から感謝申し上げます。○○様も健康にはくれぐれもご留意ください。
□ 温かいお心遣いに、心から感謝申し上げます。○○様も何卒お身体おいといください。
□ 温かいお心遣いに、心から感謝いたします。○○さんもお元気で過ごされますようお祈り申し上げます。

 

「ご自愛ください」の意味や使い方、注意ポイント、言い換え表現や返事の仕方まで解説しました。「ご自愛ください」は相手の体調や健康を思いやる際に使われる敬語表現で、幅広いシーンで使用できる言葉です。さまざまな言い換え表現がありますので、言葉の意味や使い方を知って、使い分けるようにしましょう。ビジネスシーンをはじめ人間関係を円滑にするために、相手との関係性や距離感を把握し、最適な表現で相手への思いやりの気持ちを伝えられるようにしましょう。