ビジネスマナー 基本ルールのおさらい【 電話応対 編 】

近年はSNSやチャットツールが浸透し、電話をする機会が減少したことで、電話に苦手意識を持っている人も少なくありません。電話の受け方・かけ方に関するマナーは、社会人として覚えておくべきビジネスマナーのひとつです。電話応対の基本マニュアルをおさらいをしてみてはいかがでしょうか。電話応対の基本的なポイントをご紹介いたします。

 

1: 電話応対の基本・心がまえ

電話応対の準備や心構えについて、基本的なポイントを3つご説明いたします。

● メモ用紙とペンを用意する
メモを取りながら電話の用件を聞けるように、電話のそばにメモ用紙とペンを置いておくようにしましょう。また、スムーズな電話応対をするために、電話の保留や転送、ボリューム調整など、電話の操作方法は覚えておきましょう。

● 会社の代表としての心がまえを持つ
電話で話している人が、その会社の「代表」として応答しているというイメージから、電話の印象が会社全体の印象になることもあります。電話は顔が見えない分、言葉遣いによって不快に思われる恐れがありますので、電話におけるマナーは重要視されています。会社の代表として電話応対しているという意識をしっかり持ち、敬称や敬語など言葉遣いも失礼がないようにしましょう。

● 聞きやすい声で話す
電話は相手の顔が見えないため、声の大きさ、トーン、話すスピードによって、印象が変わってしまいます。 話し声や話し方によってマイナスな印象、イメージを残さないように、注意が必要です。小さな声や早口になったりせずに、普段より明るい声を意識して、相手に聞き取りやすく話すようにしましょう。

 

2: 電話を受けるとき

電話を受けるときの手順とポイントをご説明いたします。
ただし、会社によってルールやマニュアルが設けられていることもあるため、事前に確認しましょう。

● 2-1: 電話は「3コール以内」に受話器を取る

電話がかかってきたら、3コール目が鳴り終わる前に受話器を取るのが、仕事における一般的なマナーです。3コール目が鳴り終わる前に出られないと、相手は待たされていると感じてしまうケースが多く、電話を切ってしまう可能性があります。電話を受ける時は、基本的に3コール以内に受話器をとりましょう。

一般的に電話での第一声は「もしもし」ですが、ビジネスシーンでは「もしもし」と言いません。電話をとったら、相手が名乗る前に、自分から「お電話ありがとうございます。株式会社○○○○ でございます」や「お電話ありがとうございます。株式会社○○○○ の ○○ でございます」といいます。朝9~10時くらいまでは「お電話ありがとうございます」の部分を「おはようございます」ということもあります。

3コール以内で電話をとれずに相手を待たせてしまった場合は、最初に「大変 お待たせいたしました」と言って、お詫びの気持ちを伝えましょう。会社によって受け答えのルールがある場合は、そのルールに合わせます。

 

● 2-2: 相手の会社名・名前を復唱・確認してメモを取る

相手が会社名と名前を名乗ったら、「いつもお世話になっております。株式会社○○○○ の ○○ 様でいらっしゃいますね」と、聞き間違いを防ぐために復唱しながら確認し、必ずメモを取ります。

相手が名乗らないときは「誠におそれ入りますが、御社名とお名前をうかがっても よろしいでしょうか」などと、名乗ってもらうように促します。会社名を名乗らないときは「○○ 様、差し支えなければ 御社名をうかがっても よろしいでしょうか」と伝え、聞きとりづらい場合は「大変 恐れ入ります。お電話が少し遠いようなので、もう一度、御社名をおっしゃっていただけますでしょうか」としっかり聞き取ります。

 

● 2-3: 担当者に取り次ぐ

相手から「●●さんをお願いします」と担当者への取り次ぎを頼まれた場合は、担当者の名前を敬称はつけずに「●●でございますね。ただいまおつなぎいたします。少々お待ちいただけますでしょうか」などと伝え、取次先をしっかり確認してから電話を保留にします。

保留になっていることを確認してから、担当者に取り次ぎます。受話器を手で押さえた状態で取り次ぐのはマナー違反です。電話を取り次ぐ際、すぐ近くの席の人へつなぐ場合でも「保留」にするのが基本です。担当者が席にいる場合は、内線をかけるまたは直接声をかけて「株式会社○○○○ の ○○ 様からお電話です」と伝えて電話応対は完了です。

 

● 2-4: 担当者が不在の場合

担当者が不在のときは、保留を解除してお待たせしたことを詫びます。そのあとに「担当者が不在であること」と「戻りしだい電話させること」をお伝えします。担当者からの折り返し電話のおおまかな時間もあわせて伝えて、必ず相手の連絡先を確認します。

例:
申し訳ございません。本日●●は外出しており、17時までには戻る予定となっております。
戻りしだい、●●から折り返しお電話するように申し伝えますが いかがでしょうか。

「差し支えなければ、ご用件をおうかがいして●●に申し伝えます」や「差し支えなければ、ご伝言を承ります」など、相手の意向を確認し代理で用件をうかがうと、折り返しの電話が円滑に進みます。一般的に折り返し電話をかけるのがマナーですが、かけた側の都合によっては「こちらからまた連絡します」など対応を示してくることもあるため、こちらから対応を確認しておくようにしましょう。

 

● 2-5: 相手が電話を切ってから受話器を置く

かけた側が電話を切るのがマナーといわれていますので、相手が電話を切るまで待ちましょう。「プープー」という音が鳴って、相手が切ったことを確認できてから受話器を置きましょう。

相手から電話を切らないときは「お電話ありがとうございました。失礼いたします」などといって、電話でのやり取りが終わったことを伝え、相手から電話を切るのを促すといいでしょう。

 

● 2-6: 担当者に伝言を残す

電話を終えたら、すみやかに担当者のデスクに伝言メモを残すか、チャットツールなどで連絡をします。

□ 電話を受けた日付と時間
□ 相手の会社名(部署名)
□ 相手の氏名
□ 相手の連絡先
□ 用件・伝言内容
□ 折り返しの要・不要
□ 電話を受けた人の名前(自分の名前)

わかりやすく、はっきりと書いておきましょう。また、伝言メモをおいただけで済ませずに、担当者が戻り次第、口頭でも電話があったことを伝えると確実です。

 

● 2-7: こんなときは どうする?

「電話応対」といってもさまざまなケースがあります。このようなときにはどうしたらよいのでしょうか。

〈 間違い電話を受けたとき 〉
相手に「こちらは××××-××××番の〇〇株式会社でございます。お手数ですが、お電話番号をご確認いただけますでしょうか」 と電話番号を確認し、最後まで丁寧な応対をしましょう。

〈 途中で電話が切れてしまったとき 〉
あわててこちらから電話をしたくなりますが、お互いがかけ直しするとつながりにくくなるため、一般的にかけた方がかけ直しをします。電話を受けた側の場合は、再度かかってくるのを待ちましょう。かけ直しを受けたら、「かけ直しいただきありがとうございました。お手数をおかけして申し訳ありません」とひと言添えましょう。

〈 質問されて回答・解決できないとき 〉
相手が質問をしてきた場合、自分ひとりで回答・解決できないこともあります。その際は「恐れ入ります。その件に関しましては少々お時間を頂戴したいのですが、折り返しお電話を差し上げてもよろしいでしょうか」や「恐れ入ります。社内確認をしまして折り返しお電話をさせていただきます。 お返事はいつまでに差し上げたらよろしいでしょうか?」などきちんと相手に伝えましょう。

〈 個人情報を聞かれたとき 〉
携帯電話の番号などをはじめとする、社内の個人情報は無断で開示してはいけません。「緊急なので○○さんの電話番号を教えてほしい」と個人情報を求められることがあるかもしれませんが「○○に連絡をして折り返しさせます」と答えるようにしましょう。また「御社の部長のお名前を失念してしまいまして、、、」などと役職のみ伝えて氏名を聞き出そうとするケースもあります。「本人に確認して、必要な場合は折り返しご連絡いたします」などと応対しましょう。

 

 

3: 電話をかけるとき

続いて、電話をかけるときに気をつけたいポイントやマナーについて順番に説明します。

● 3-1: かける前に用件を整理しておく

電話をかける前は、会社名や法人名、部署名、役職、氏名をしっかり把握しておきましょう。場合によっては同じ名字の方がいらっしゃる可能性があるため、名字のほかに下の名前も確認しておくといいでしょう。お名前を間違えるのは失礼になりますので、しっかり確認しましょう。

また、スムーズに用件が伝えられるように、話す内容を確認し、整理しておきましょう。「◯◯の件でお電話いたしました」と、電話の内容を簡潔に伝えられます。メモにまとめたり資料を用意するなど、準備しておくことで円滑に話を進められます。さらに会話中にメモをとったり予定を確認したりできるよう、メモ帳やスケジュール帳、筆記用具を手元に準備しておきましょう。

 

● 3-2: 電話をかける時間帯に注意する

始業前 / 昼休み / 相手の業務時間外や、週明け・連休明けの午前中は忙しいと想像できます。なるべく忙しいであろう時間帯は避けましょう。どうしてもかける必要がある場合は、最初にひとこと言い添えるのが礼儀です。

● 始業前にかける場合: 「 朝 早くおそれいります。○○会社の○○と申します 」
● 終業後にかける場合: 「 夜分に おそれいります。○○会社の○○と申します 」

 

● 3-3: 電話がつながったら、はっきりと名乗る

電話がつながったら「もしもし」とは言わず「私(わたくし)、◯◯会社の◯◯と申します。いつもお世話になっております」と、自分の会社名と名前を名乗ります。次に「◯◯部の◯◯様はいらっしゃいますでしょうか」や「◯◯部の◯◯様はお手すきでいらっしゃいますか」と、取り次いでほしい相手の部署名や氏名、肩書きを伝えます。

相手の用件で折り返しの電話をする場合は「私(わたくし)、◯◯会社の◯◯と申します。いつもお世話になっております。○○部の○○様に先ほどご連絡をいただき、折り返しお電話いたしました。」と伝えます。

 

● 3-4: 用件を伝える

相手が電話に出たら、もう一度「お世話になっております。◯◯会社の◯◯と申します」と、自分の会社名と名前を名乗ります。次に「〇〇〇の件でご連絡させていただきました。ただいまお時間○分ほどよろしいでしょうか?」など、先に相手の都合をうかがってから、用件を話し始めるようにしましょう。

用件は簡潔に伝えて「ご不明な点はございませんか?」「~でよろしいでしょうか?」などと確認しておくと、内容が正確に伝わっているかどうかを確認できます。

 

● 3-5: 相手が不在時の対応を決めておく

電話をかける前に「相手が不在の場合はかけ直すのか、伝言を残すのか」を考えておくと、スムーズに対応できます。

相手が不在の場合は帰社時間を確認し、こちらからかけ直す旨を伝えます。「お戻りは何時ごろのご予定でしょうか?」「それでは改めてこちらからご連絡を差し上げます。ありがとうございました」などと伝える流れが一般的です。また、急ぎでない簡単な用件であれば「○○様に○○会社の○○から電話があったことをお伝えください」と伝言を残すのも1つの方法です。

担当者と直接話す必要があり、複数回 電話しても不在であれば「恐れ入りますが、お戻りになられましたら、〇〇社の〇〇まで折り返しのお電話をいただきたい旨をお伝えください」などと、折り返しの電話を依頼します。その場合は応対してくれた相手の氏名を聞いてメモしておくと安心です。

 

● 3-6: 電話の切り方に注意する

ビジネスシーンでの電話は、かけた側が先に電話を切ります。電話を切る瞬間は、その人の印象を決めてしまう大切な場面です。受話器の置き方によっては、相手に「ガチャン」と大きな音が聞こえてしまい不快感を与えてしまう恐れがあります。会社の電話で受話器を置く際は、静かに置くように注意しましょう。受話器を置く前に、フックスイッチを指で押しつつ受話器を置く方法も有効です。フックスイッチは受話器を置く部分にある突起のことで、フックスイッチを指で押しながら受話器を置くと、静かに電話を切ることができます。

用件が終わったら「お忙しい中、ありがとうございました。それでは失礼いたします。」や「お時間をいただきまして、ありがとうございました。それでは失礼いたします。」などお礼を伝え、3秒から5秒ほど置いてから電話を切ります。電話の切り方は印象に残り、会話した人や、会社のイメージに影響を与えてしまうことがあります。時間に余裕がなく急いでいても、電話の切り方は雑にならないように、気持ちのいい切り方をして会話を締めくくりましょう。

また、基本的に電話はかけた人から切るのがマナーですが、相手がお客さまの場合は、先に相手が切ったことを確認してから受話器を置きましょう。相手から電話を切ってくれない場合は「お電話ありがとうございました。失礼いたします」などと言って、電話でのやり取りが終わったことを伝え、相手から電話を切るのを促すといいでしょう。

 


 

電話応対の基本的なポイントをご紹介しました。電話応対は、社内外とコミュニケーションを取るための大切なツールで、会社全体の印象に大きく関わります。はじめは緊張していても、何度か電話をかけたり受けたりしているうちに、自然と適切な言葉が出てくるようになります。相手の立場に立って明るく聞き取りやすい発声を意識して、丁寧な応対を心がけましょう。