インボイス制度の対応準備・後編

インボイス制度導入にあたって適格請求書発行事業者の登録が完了しましたら、次の事前準備に取り掛かります。
社内外でさまざまな確認や調整・準備が必要となります。売り手の立場と、買い手の立場として、それぞれの事前準備についてご案内いたします。

売り手・買い手の立場としての事前準備

■ 売り手の立場としての事前準備

  1. 取引先にどのような書類を渡しているのかを確認します。
    自社が発行している請求書以外に領収書・納品書・レシートなど、どの書類をインボイスにするか決めます。
  2. 該当する書類がインボイスとして必要な記載事項と、消費税額の計算方法を満たしているか確認します。
    インボイス制度に対応するよう、書式 (フォーマット) の変更もしくは電子インボイスの提供など、インボイスの交付方法を検討します。
  3. ご利用のレジや経理・受注システム、販売管理システムなど、インボイス制度に対応できているかどうかを確認する必要があります。
    未対応の場合は、改修またはシステムの入れ替えを検討し、コストやスケジュールなど確認します。
  4. 発行したインボイスは7年間保存する義務があります。
    インボイスの保管方法として、控えをファイルに綴じて保管するか、電子データとして保管しておくか検討する必要があります。
  5. 継続的に取引を行う取引先に対して、登録番号や交付・受領方法の連絡を行います。
  6. インボイス制度に係る社員研修の実施します。
  7. 業務の影響について確認し、業務フローの見直しを行います。

■ 買い手の立場としての事前準備

  1. インボイス制度に対応できるよう、必要に応じて経理・発注システムなどのシステム改修、またはシステムの入れ替えを検討し、コストやスケジュールなど確認します。
  2. 受領したインボイスは7年間保存する義務があります。
    インボイスの保管方法として、控えをファイルに綴じて保管するか、電子データとして保管しておくか検討する必要があります。
  3. 継続的に取引を行う取引先に対して、自社の適格請求書発行事業者番号の通知と依頼を兼ねた文書を作成し、取引先の登録状況を確認します。
  4. インボイス制度に係る社員研修の実施します。
  5. 業務の影響について確認し、業務フローの見直しを行います。

取引先が免税事業者の場合

適格請求書発行事業者になるために「課税事業者」に転換できるかを確認する必要があります。
課税事業者へ転換する場合は、制度開始までに対応いただいてインボイスを発行してもらう流れになります。

しかし、取引先が免税事業者のままでいることを選択する場合、仕入れの際にインボイスを受領することができません。
インボイス制度が導入されたあと、下記の期間では適格請求書発行事業者以外からの仕入も、一定割合の仕入税額控除が可能ですが、経過措置期間を含め段階的に仕入税額控除ができなくなります。

取引先の中に免税事業者が含まれている場合、買い手側は今後の対応を考える必要があります。
インボイス制度が導入されたあと、免税事業者との取引は仕入税額控除の対象にならないため、買い手側は今までより多くの消費税額を支払わなければなりません。
その分を踏まえた適切な取引価格の設定交渉など、方針を検討することが必要となります。
免税事業者との交渉を行う際は、独占禁止法や下請法などに違反しないよう十分注意しましょう。
制度導入後の影響を加味して、適切な取引価格を設定しましょう。